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2010年 03月 17日
Thirst
パク・チャヌク監督作品(2009/韓国・米) 思わず「なんじゃ、こりゃー」と叫びたくなるような強烈な映画。何しろもう、設定が奇想天外。神に祈れど救われない信者たちの姿を見て己の無力を感じ、殉教するつもりで伝染病を研究する施設の実験台となった神父が、どういうわけか施設に置かれていたバンパイアの血液を輸血されたことで、吸血鬼となってしまう。ああ、喉が渇く。血、血が吸いたい。でも、そこは神に仕える神父の身。殺人を犯すわけにはいかない。神父は人を殺さずに血液だけを入手する方法を編み出す。しかし、血に飢えたことがきっかけで、女への欲をも呼び覚まされてしまった。そんな神父の目の前に、不幸を絵に描いたような女が現れる…。ソン・ガンホの、ナチュラルに、静かに、狂ってる演技が素晴らしいし、背徳を身に纏うことでどんどん美しくなっていくキム・オクビンの表情が見事で強く印象に残る。脇を固めるキャストにも存在感がある。パク・チャヌクの演出がまた自由自在で、グッと空気をしめるところと、思い切り遊ぶシーンのバランスが最高。映画全体のクオリティがとにかく高い。映像と音響の効果も抜群だった。イマジネーション豊かな狂気の世界に心底しびれてしまった。 ヒューマントラストシネマ有楽町にて。[公式サイト] 2010年 01月 30日
Cool Hand Luke
スチュアート・ローゼンバーグ監督作品(1967/米) パーキングメーターを壊して刑務所に入れられたルーク(ポール・ニューマン)。飄々とした態度で自分のスタイルを崩さないルークは、囚人内でボス格のドラッグ(ジョージ・ケネディ)に目をつけられ、いたぶられる。しかし、どれだけ痛めつけられても立ち上がり続けるルークの根性にドラッグはじめ囚人たちはやがて感化されていく。人望を集めたルークはやがて脱獄を試み…。多くの映画でポール・ニューマンが見せる不敵な笑みがどうにもわざとらしい、といつも映画の見始めには思うのだけど、それがいつのまにか気にならなくなってくる不思議。ルークが根性試しでゆで卵を1時間に50個食べる挑戦をして、囚人たちがその成否で賭けをするというシーンがばかばかしくも愉快で素晴らしい。何度も脱獄を繰り返しては捕まり、看守から壮絶な暴力を受けても、反骨心を失わないルーク。その笑顔にどんどん奥行きが生まれて、複雑で陰影のあるものに変わっていく様子に目が釘付けだった。凄いなあ、ポール・ニューマンの顔で見せきる力は。 NHK-BS録画。 Tags:刑務所・脱獄 2010年 01月 25日
Ten Seconds to Hell
ロバート・アルドリッチ監督作品(1959/米・英) 戦時中爆弾処理をしていた男たちが、戦争が終わり帰国の途につき、市街地に残る不発弾の処理を請け負う。命を賭けた危険な仕事。男たちは給料の半分を出し合い最後まで生き残った人間がすべてを得るという賭けをする…。いやあ、骨のある映画だなあ。戦場を経験した人間の心はどこか壊れてしまうということを、感傷を入れずに行動だけを通して淡々と描いていく。危険な賭けから降りたいけれど、金も手に入れたい。他に仕事のあてもない。戦争が人間にもたらす害の残忍さが静かに心に迫ってくる。それでも人間が最後に守るべきものは何なのか。感情の爆発のさせかたに圧倒的なリアリティのあるジャック・パランスの表情が映画を深みのあるものにしていたように思う。処理の難しい不発弾を前にした一触即発のシーンはかの『恐怖の報酬』にも匹敵するような緊迫感だった。 WOWOW録画。 Tags:戦争 2009年 12月 13日
El Dorado
ハワード・ホークス監督作品(1966/米) 悪い女に騙されて酒浸りになっている保安官のロバート・ミッチャム。その噂をきいてエル・ドラドに戻ってきた親友のジョン・ウェインと仲間たちが、アル中のミッチャムを白面にさせるために、これを飲むと酒が飲めなくなるという、正体不明のどす黒い液体を飲ませるまでの一連のシーンがやけに楽しい。やたらと図体のでかい二人が子供っぽくふざけあってる様と、少しずつ保安官としての矜持を取り戻していくミッチャムの表情を見ているだけで何だか満足してしまう。 NHK-BS録画。 Tags:西部劇 2009年 12月 12日
The Spy Who Came in from the Cold
マーティン・リット監督作品(1965/米) 精神的にも肉体的にもあまりに過酷すぎるその任務を、命を賭けてまで全うしようとするその心は一体どこから生まれてくるのか? そして、人はなぜ人を裏切るのか? 国家とは一体何なのか? ヒリヒリとした緊張感の中、騙し合い、騙されあうスパイたちの、平穏という言葉とは無縁の日々と、その虚しい結末。絶望的に暗い物語なんだけど、見えない何かに心をガッシリと掴まれる。ともかく、国家と人間というもの、そして社会のシステムに非情にのみ込まれていくスパイという日陰の存在の哀しみを、実に見事に描いた映画だと思う。 WOWOW録画。 Tags:ミステリー・サスペンス 2009年 12月 06日
市川崑監督作品(1960/大映)
放映の始まる前の「銀残し」の解説であったように、くすんだような色合いが大正という時代の雰囲気を濃厚に表現していて、それに凝りにこったカメラワークとアングルが抜群の素晴らしさ。前半は内容に似合わないやたらとテンポのいい展開なんだけど、人物の感情の流れをまったく途切れさせずに、鮮やかに場面転換していく映像のリズムがとても心地いい。絵に描いたような美人なのにさえない女扱いされている(はずだけど隠しきれない美貌が随所に顔をのぞかせてしまう)岸恵子。そんな彼女に何かと嫌味ったらしい文句を言いつける憎々しい田中絹代。息子が大事で家族にまったく意見をできない森雅之。若い男ゆえの幼い感情を過剰に表現する川口浩。ちょっとだけ現れてやたらと印象を残す岸田今日子。ただ、ぼーっと見ているだけで満足できる。この時代の日本映画は本当にオーラがあるなあ。 NHK-BS録画。 Tags:日本映画 2009年 11月 29日
Our Man in Havana
キャロル・リード監督作品(1960/英) 冷戦時代。キューバのハバナで掃除機販売をしているワーモルド(アレック・ギネス)は、諜報期間のための情報屋にならないかと英政府の人間に誘われる。娘のために金を稼ぎたかったワーノルドはその誘いを受けるが、軍や政治に通じる情報源となる人間を手配できず、嘘をついて報告を続けていくうちに、その情報が重要機密とされ後にひけなくなっていく…。ワーモルドが描いた掃除機の形を模したやたらとリアルで空想的な軍の秘密基地図が笑える。シリアスな話の仮面を被っているけど、アレック・ギネスがそこにいるとすべてが悪い冗談のようになってしまう。今の目で見ると諜報活動のバカバカしさを描いたコメディのようにも思えるんだけど、当時は割と笑えない話だったのかもしれない。「ボタンを押したら世界がおしまい」みたいな世界観って、子供の頃、確かにそうだった記憶がある。 WOWOW録画。 Tags:ミステリー・サスペンス 2009年 10月 10日
放・逐
ジョニー・トー監督作品(2006/香港) ボス(サイモン・ヤム)にたてついたウー(ニック・チョン)を殺すことを命じられたブレイズ(アンソニー・ウォン)とファット(ラム・シュ)。ウーの身を守りにきたタイ(フランシス・ン)とキャット(ロイ・チョン)。5人は固い絆で結ばれた仲間だった。残された妻と子供のために金を残したいというウーのため、裏の仕事の仲介屋に出向いた5人だが…。うわあ、これは面白い。もちろんアクションのキレもいいのだけど、それぞれに個性のあるキャラクター設定と、緊張感の中にふっと笑いをしのばせるジョニー・トーの演出が素晴らしい。予想に反したことが次々に起きて窮地に追い込まれていくという、そのどつぼにはまる状況の見せ方が本当にうまい。ずっと優柔不断だったアンソニー・ウォンが、最後の最後でコインの表裏に頼らずに、男気のある決断をするシーンにはグッときた。ああ面白かった。最高! WOWOW録画。 Tags:香港ノワール 2009年 10月 09日
The Mackintosh Man
ジョン・ヒューストン監督作品(1973/米) リアデン(ポール・ニューマン)は、マッキントッシュ(ハリー・アンドリュース)の計画で高価な宝石を強奪。しかしすぐに逮捕され刑務所にいれられてしまう。ある日、刑務所でリアデンは、秘密組織の手による脱獄の計画を持ちかけられる…。英国が舞台のなんともいえない渋さのあるムードには魅力があるんだけど、ポール・ニューマン演じるリアデンというキャラクターの設定が今ひとつはっきりしてなくて、話もそんなに面白くない。というかわかりにくい。愛国心を熱心に語る人間が、結局祖国の敵だったみたいなありがちな展開はまあそれでいいとして、このリアデンという男を突き動かす衝動のようなものが見えにくくて、気持ちが入っていかない。秘密組織の館から命からがら逃げだして海辺の街まで辿り着くまでのシーンは、急いで逃げなければという欲求がはっきりしてるから、ハラハラさせられる。でも映画全体としては、リアデンの行動にそういうものが見えにくいのだ。 WOWOW録画。 Tags:ミステリー・サスペンス 2009年 10月 02日
小澤啓一監督作品(1968/日活)
前作で東京から離れ、青森へと向かった雪子(松原智恵子)を追って、雪の青森に辿り着いた五郎(渡哲也)。やくざな稼業から足を洗って、2人で穏やかに暮らそうとするが、そうは問屋がおろしてくれない。かたぎの暮らしでは思うように金が稼げず、昔馴染みの男がいる木内組の用心棒として雇われることに…。やくざの世界の非情さにどんどん追い込まれていく展開が、目の離せない面白さ。子供のためにお土産を買うという優しさを見せたことで命を落とすことになる二谷英明、復讐に燃える田中邦衛、チンピラと恋仲になるダンサーの梶芽衣子、ダンサーから娼婦に身をおとす芦川いずみ。この時代の強烈に個性の強い役者陣の、はまりにはまった演技が見ていて本当に楽し〜い。渡哲也が、これぞ主役というお約束の活躍を見せてくれるのもたまらない。ああ、無頼シリーズはいいなあ。 WOWOW録画。
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